こんにちは、宅地建物取引士の宅男です。
さて、分譲マンションは購入がいいか、賃貸がいいかということが議論されます。もちろん、それぞれにはメリット、デメリットがあります。
では、具体的にどのような人ならば購入した方がよい、賃貸がよいと分けられるのでしょうか?ここでは、それぞれのメリット、デメリットに加えて総合的にかかる費用から考えます。
また、費用を少しでも抑える工夫についてお教えします。
Contents
マンションを購入した際にかかる費用
まずは、マンションを購入し35年間居住した場合を考えてみましょう。
【購入金額3,000万円、家族4人、車1台の場合】
項目 | 内容 | 費用 |
初期費用 | 仲介手数料や登記費用など購入費用の5%~8%
(3,000万円×5%) |
150万円 |
住宅ローン | フラット35利用時、固定金利1.090%の場合
(10.1万円×12ヶ月×35年間) |
4,212万円 |
固定資産税 | 市町村や物件によって異なる、年間15万円と仮定
(15万円×35年間) |
525万円 |
管理費等 | 管理費と修繕積立金の合計額、毎月2万円と仮定
(2万円×12ヶ月×35年間) |
840万円 |
駐車場代 | 駐車場の形態によって異なる、毎月1万円と仮定
(1万円×12ヶ月×35年間) |
420万円 |
団体信用生命保険料(※1) | 任意保険、フラット35利用で加入する場合 | 223万円 |
火災保険 | 保証内容によって異なる、5千円~1万円程度
(5千円×35年間) |
17.5万円 |
地震保険 | 火災保険の30%~50%程度
(1,500円×35年間) |
5.25万円 |
合計 | 6,392.75万円 |
※1、団体信用生命保険・・・契約者に万が一のことが起こりローンの返済ができなくなってしまった場合でも住宅ローンの残債を返済してくれる保険、任意加入となります
マンションを借りた際にかかる費用
次にマンションを借りて35年間居住した場合を考えてみましょう。
【家賃10万円、家族4人、車1台の場合】
項目 | 内容 | 費用 |
初期費用 | 仲介手数料や敷金・礼金など、家賃の4か月分~6か月分程度
(10万円×4か月分) |
40万円 |
賃料 | 35年間居住した場合
(10万円×12ヶ月×35年間) |
4,200万円 |
更新料 | 物件によって異なる、2年に1回・更新料は賃料の1か月分と仮定
(10万円×17回) |
170万円 |
駐車場代
(更新料) |
駐車場の形態によって異なる、マンション敷地外の駐車場となることが多く1万5千円と仮定
(1.5万円×12ヶ月×35年間) また駐車場の場合、1年に1回更新として賃料の1ヵ月分が必要となることが多い (1.5万円×35回) |
682.5万円 |
保証会社更新料(※2) | 保証会社によってことなる、更新が1年に1回・1万円と仮定
(1万円×35回) |
35万円 |
火災保険 | 保証内容によって異なる、不動産会社指定の保険に加入する必要があり、年間1万円程度
(1万円×35年間) |
35万円 |
地震保険 | 火災保険の30%~50%程度
(3,000円×35年間) |
10.5万円 |
合計 | 5,173万円 |
※2、保証会社・・・契約者に連帯保証人がいない場合に代わりに家賃の保証を行ってくれる会社
マンションを購入した際のメリット、デメリット
「1、マンションを購入した際にかかる費用」と併せてメリットとデメリットを考えます。
マンションを購入した際のメリット
マンションを購入した際のメリットは4つあります。
1、マンションが資産として残る
やはり、マンションを購入した際の一番のメリットはマンションが資産として残ることでしょう。住宅ローンを完済した後はマンションが資産として残ります。
もし、住宅ローンを完済した後に引っ越ししたいと考えた場合、マンションを売却することにより、いくらかの金額を得ることができるでしょう。
また、売却せずとも賃貸物件として貸し出すことにより家賃収入を得ることもできます。
2、住宅ローン完済後は費用が少ない
住宅ローンの完済後のケースを考えてみましょう。もちろん、完済後は住宅ローンの支払いがなくなります。そのため、賃貸に比べて毎月の費用がかからなくなります。
老後は収入が少なくなります。そのため、住宅ローンを完済しているマンションを所有していると安心して老後に備えることができるでしょう。
3、団体信用生命保険を使用できる
団体信用生命保険とは、住宅ローンの契約者の万が一に備える保険です。住宅ローンを契約する人は、家計の柱となっている人が契約することが多いでしょう。
団体信用生命保険を使用することにより家計の柱となっている人が、万が一住宅ローンの返済中に亡くなってしまったとしても残債を保険が支払ってくれます。家族に資産を残すことができるのです。
4、室内をリフォームできる
マンションを購入した場合、室内を自分の好きなようにリフォームすることができます。例えば、床や壁紙の色や模様を好きなものを選択できるため、快適に暮らすことができるでしょう。
また、3DKを2LDKに変更するなど、ライフスタイルの変化に伴う工事も行うことができます。
マンションを購入した際のデメリット
マンションを購入した際のデメリットは4つあります。
1、35年間の居住であれば賃貸の方が安い
物件によって異なるものの同じようなマンションであれば「1、マンションを購入した際にかかる費用」と「2、マンションを賃貸した際にかかる費用」で比べたように賃貸の方が安くなることが多いです。
特に、それぞれにかかる初期費用は賃貸の方が圧倒的に安いです。資金に余裕がない場合、マンションを購入するハードルは高いでしょう。
2、修理費がかかる
マンションを購入した場合、キッチンや浴室などが劣化した際には自分で修理費を支払わなければなりません。これらの修理費は数百万円かかることも珍しくなく、一時的に大きな支出が必要となってしまうでしょう。
また、エアコンや換気扇などの設備も自分で修理費を支払わなければなりません。こちらも、定期的に支出が必要となります。
3、役員にならなければならない
管理組合はマンションの所有者全員で組織される組合です。運営はマンションの代表として主に理事で行われます。
理事は輪番制になっているマンションが多く、定期的に役員にならなければならないのです。役員になると仕事などで忙しい場合にも理事会に出席しなければならず、負担が重くなります。
4、住み替えが難しい
マンションは一生に一度の買い物です。簡単に買ったり売ったりできるものではありません。そのため、住み替えを行うことが非常に難しいです。
もし、近隣トラブルなどがあった場合でも住み替えが難しいため、そのまま住み続ける必要があるのです。
マンションを借りたのメリット、デメリット
次に、「2、マンションを借りた際にかかる費用」と併せてメリットとデメリットを考えます。
マンションを借りた際のメリット
マンションを借りて居住した際には、3つのメリットがあります。
1、大きな修理費がかからない
マンションを賃貸した際の一番のメリットは大きな修理費がかからないことです。では、なぜ大きな修理費が必要とならないのでしょうか?
賃貸物件では、キッチンや浴室などにトラブルがあった場合、貸主が修理を行わなければなりません。そのため、借主が大きな修理費を負担することがないのです。
また、エアコンやコンロなどが貸主の設備となっている場合もあります。この場合には、エアコンやコンロの設備も貸主で修理を行うため、賃貸期間中に修理費が必要となることはほとんどないでしょう。
2、35年間で必要になる費用が安い
マンションに35年間居住するときの費用を考えると、賃貸の場合の方が安くすみます。初期費用も、購入と比べると費用がかかることはありません。
また、大きな修理費も必要とならないため、安定した暮らしを行うことができるでしょう。
3、ライフスタイルの変更に対応できる
賃貸の場合、購入の場合と比べると引っ越しが簡単にできます。そのため、子供が大きくなったために少し小さい部屋に引っ越すなどライフスタイルの変化に柔軟に対応できます。
また、近隣トラブルに見舞われた場合でも、引っ越しを行うことにより再び快適に生活することができるでしょう。
マンションを借りた際のデメリット
マンションを借りて居住した際には、2つのデメリットがあります。
1、資産が残らない
マンションを借りて居住した際の一番のデメリットがマンションが資産として残らない点です。賃料をいくら支払おうとマンションは自分のものとなりません。
そのため、老後もマンションに住みたい場合には、引き続き賃料を支払わなければなりません。収入が少なくなる老後では賃料が家計を圧迫してしまうでしょう。
2、室内を好きに利用することができない
マンションは自分のものではありません。そのため、室内を傷つけたり、勝手にリフォームを行うようなことは禁止されています。
例えば、光回線の工事などでも貸主の許可が必要となります。このときに、貸主の許可を得ることができなければ、光回線を引き込んでインターネットを利用することができないのです。
また、マンション自体がペット飼育可となっている場合でも、貸主の判断により室内でのペット飼育が禁止されていることもあります。このように、マンションを借りた場合には、室内の利用が制限されてしまいます。
居住費を抑える方法
「1、マンションを購入した際にかかる費用」と「2、マンションを借りた際にかかる費用」でそれぞれの場合にかかる費用を計算しました。
思ったより費用がかかってしまうと思ったかもしれません。これは、もちろん一例です。工夫することによりそれぞれの場合で費用を抑えることができます。
マンションを購入した際に費用を抑える方法
マンションを購入した際に費用を抑える方法は3つあります。
1、住宅ローン控除を利用する
住宅ローン控除とは、10年間、年末に住宅ローン残高の1%が所得税から控除され、確定申告で戻ってくる制度のことです。
例えば、1年目の年末の住宅ローンの残債が3,000万円あったとします。この場合には、残債の1%である30万円が所得税と住民税から控除されるようになります。
このように、住民ローン控除を利用することにより10年間は費用を抑えることができるようになります。利用条件として、確定申告を行うことが条件となっている点に注意が必要です。
2、固定資産税を見直す
「1、マンションを購入した際にかかる費用」では、固定資産税を一律固定として考えました。しかし、マンションは劣化し、価値が下がっていくものです。そのため、固定資産税も少しずつ安くなっていきます。
固定資産税は、建物と土地の評価額に比例して決められます。したがって、建物と土地の評価額が低ければ固定資産税も安くなるのです。
しかし、評価額を安くすることなどできるのでしょうか?土地と建物の評価は役所によって行われますが、評価額が間違っていることがよくあるのです。
もし、間違っている場合には納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して60日以内に不服申立を行うことにより税金の還付を受けることができます。
建物と土地の評価額は個人でも見直すことができます。固定資産税納税通知書が届いたときには、必ず適正な金額になっているか確認を行うようにしましょう。
3、火災保険を複数年契約する
火災保険は複数年契約を行うことにより、一年あたりの費用が安くなります。例えば、1年間5,000円程度の火災保険であれば、10年契約で3万円〜4万円となり少しではありますが、1年間あたりの火災保険料を抑えることができます。
また、地震保険も同様です。複数年契約を締結することにより1年間あたりの地震保険料を抑えることができます。
マンションを借りた際に費用を抑える方法
マンションを借りた際に費用を抑える方法としておすすめしたいことは1つです。それは、貸主と家賃交渉を行い家賃を値下げするということです。
基本的に、家賃は値下がりしていくものと考えられています。そのため、長年マンションを借りている場合には、家賃交渉に応じてくれる可能性が高く、家賃の値下げが可能性となるでしょう。
もし、同じマンションで賃貸の募集があった際にはそちらの賃料を出して交渉すると、交渉が上手く行われる可能性が上がります。
しかし、家賃交渉では注意点もあります。それは、貸主から値上げの交渉もできるということです。特に理由がなければ、貸主からの値上げの交渉に応じる必要はありません。
では、理由がある場合はどうでしょうか?「近隣に駅ができたために近隣の賃料が上がっている」などの正当な理由がある場合には、家賃交渉に応じなければならないときもあります。
そのため、家賃交渉を行う際には、まずは近隣のマンションの相場を確認しましょう。そして、賃料が値下がり傾向にあることを確認してから家賃交渉を行うようにしましょう。
マンションの購入と賃貸のまとめ
マンションを購入する場合と借りる場合では、それぞれにメリット、デメリットがあります。また、暮らしの上でかかる費用も異なります。
購入であれば、若いときは住宅ローンの返済に苦しむかもしれません。しかし、住宅ローンを完済することができたならばそのまま資産として残ります。そのため、老後の暮らしを考えるならば、購入がおすすめできます。
賃貸であれば、大きな費用がかかることがないために安定して暮らすことができるでしょう。また、子供が大きくなったときには新しい住居に引っ越すなどのライフスタイルの変化にも柔軟に対応できます。
いずれの場合でも、住まいにかかる費用を抑える工夫はあります。家計の中で居住費は大きな割合を占めます。工夫して居住費を抑えることにより、豊かな生活ができるようになるでしょう。